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2020-03-07

観光列車で四国を半周


JR四国のさまざまな観光列車

 観光列車といえば、JR九州の「ななつ星」などのクルーズトレインが有名です。これが5つ星のラグジュアリーホテルだとしたら、JR四国の観光列車三つは、気軽なブティックホテルというところでしょうか(泊まれませんが)。
 各列車は3両編成で、沿線にちなんだデザインの車体と内装や名前がついています。多度津~大歩危をつなぐ「四国まんなか千年ものがたり」、高知~土佐久礼・窪川の「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」、松山~伊予大洲・八幡浜の「伊予灘ものがたり」があります。香川から徳島を抜けて高知、愛媛県へと四国の西半分を列車に揺られ、車窓の景色や列車ごとに工夫をこらしたおもてなしを満喫できます。地元の料理店が作ったお弁当やドリンクをアテンダントさんが運ぶ、昔の食堂車のようなサービスも特徴です。
 2020年秋、金土日の3日間を使って、高松駅から観光列車3本を乗り継ぐ旅に出かけました。

1日目(金曜日)「四国まんなか千年ものがたり」
10:18多度津駅→12:48大歩危駅

徳島産の杉を使い、古民家をイメージした車内

 四国の鉄道発祥の地・多度津から鉄道旅はスタート。内装は徳島県産の杉を使うなどシック。調度品に讃岐漆器や庵治石、伝統工芸品が使われているのも目を引きます。列車名のごとく、四国の真ん中を通るルートです。
 列車はまもなく琴平駅に停車。金毘羅参りの起点となるこの駅には専用待合室が設けられ、事前に食事券を購入した乗客にはウェルカムドリンクが提供されました。

 ハイライトは徳島と香川の県境にある猪ノ鼻峠にある坪尻駅での下車。集落から離れており、地元住民の利用はほとんどありませんが、鉄道ファンには人気の秘境駅です。急勾配のためスイッチバック式で、運転士が進行方向を変えるためにいったん列車を停止して、後方の運転台へと移動。乗客が特別なことをするパフォーマーを見るような目で見送る姿が印象的でした。

阿波池田駅では「煙草踊り」の歓迎


 阿波池田駅のホームでは、地元に伝わる「煙草踊り」で女性たちに歓待されました。ほかにも、畑に大勢のかかしが手を振っていたり、「犬駅長」がいたり……。車内で配られた沿線マップを片手に、車窓の外に登場する色んな「おもてなし」や景色に目をこらしました。

2日目(土曜日)「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」
12:04高知駅→14:43窪川駅

発車の銅鑼を慣らすアテンダント

 高知といえば、坂本龍馬。車体にもどーんと龍馬の姿が描かれていました。内装は「文明開化ロマンティシズム」という洋風のデザイン。正午に高知駅を出発した列車は海岸沿いを走り、運転台からの映像がスクリーンに映し出され、臨場感を盛り上げます。真っ青な太平洋が見えたころ、安和駅で停車して記念撮影しました。
途中で乗り込んだ農家のグループはゆでたての枝豆を乗客に配って産地をPR。これが香り豊かで、人生史上一番おいしい枝豆でした。収穫が少ないからと車内で購入できなかったのが残念でした。

運転席から見た景色が映し出される車内

 窪川駅からはローカル線に乗り換えて、この日の宿泊地・宇和島へ。ラッキーなことにJR四国の誇るホビートレイン「かっぱうようよ号」に乗車できました。地元出身者が創業した模型メーカー、海洋堂とのコラボです。かっぱフィギュアの親子が席に座っていたり、フィギュアの陳列棚があったり、遊び心あふれる車内でした。
 蛇行する四万十川にそって、列車はのどかな田園地帯を進みます。暮れなずむ景色をながめていたら、2時間半はあっというまでした。

かっぱ親子も乗車している「かっぱうようよ号」

3日目(日曜日)
9:55宇和島駅→10:39伊予大洲駅(宇和海10号)
10:56伊予大洲駅→13:11松山駅(「伊予灘ものがたり」)

伊予上灘駅では猫駅長がお出迎え

 伊予灘ものがたりは2014年、四国初の観光列車として運行を開始しました。松山を起点に伊予大洲と八幡浜を結ぶ2路線があります。私は瀬戸内海を眺めたくて海沿いを走る伊予大洲発に乗車しました。見どころは他にもありました。五郎駅は周辺にたぬきが出ることから人間の「たぬき駅長」がお出迎え。伊予上灘駅では、本物の猫駅長3匹が待っていました。慣れた感じで、写真撮影に応じていました。

 ハイライトは下灘駅での停車。プラットフォームのすぐ前が海の絶景駅であることから、ロケ地として数々の映画やドラマに登場しています。構内に貼られた説明文によると、寅さんやキムタク(ドラマ「HERO」)もここでロケしたとか。駅は車で来た若者たちが撮影に興じ、コーヒー屋さんも出店するにぎわいでした。
 伊予市駅の手前では、削り節メーカー2社のビルが目に入ってきました。工場からはだしの香りが漂い、「花かつお通り」と言われているそうです。伊予市は削り節生産量でなんと全国1位と車内アナウンスで紹介された後、花かつおのおみやげが乗客に配られました。地場産業のアピールにもなる、粋な計らいでした。

下灘駅で手を振りあう人たち

【まとめ】
 豪華クルーズトレインと比べて、JR四国の観光列車は運賃のほかに特急料金とグリーン料金が必要なだけなので、かなりお手頃。さらに誕生日を迎える乗客は「バースデイきっぷ」を使えば、3日間、13,240円で乗り放題です。車内でバースデイカードもいただくサプライズもありました。
 コロナ下、ソーシャルディスタンシングの制約の中で、アテンダントさんや沿線住民の手作り感あふれるおもてなしがよけい心に響きました。1泊目は高知、2泊目は宇和島に泊まり、周辺観光も楽しむこともできました。「鉄分」をたっぷり取れる、非常にお薦めのコースです。(治)

各列車とも沿線の見どころをパンフで提供している

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